伊藤存氏の作品は、とてもシンプルに構成されています。通常、ドローイングの作品では質感や味わいといったものが生まれ、人びとはそこから何かを感じ取ります。しかし、一針ずつ、はっきりと縫い目を刻み作られる伊藤氏の作品では、そのような曖昧な感覚を、「糸」というもので縁取ります。
初期の作品では、モチーフが明確にわかるものが多く見られましたが、近年の作品では、その輪郭はゆるやかな曲線になり、はっきりと描写されていません。しかし、そのゆるやかさが逆に、そのものの本質を捉えているのかもしれません。
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伊藤存 1971年大阪府生まれ
糸は縫いつけた時と変わらず、滲まずそこにあります。この味気があるようなないような方法で、僕は具体的なものの面影をたよりに、人間さまの流動的な情動といった、味気のあるものと同居しつつ制作を進めていきます。情動は味気があって、絵の具では滲んだり、垂れたりして。もとい、制作が進行するにつれ流動的だったものが、刺繍によって形をもち始めます。そして、このあたりから、絵がなんか言い出すので、それに取り合っていると最初の記憶がとびはじめます。もともと何をしたかったのか、ということは大したこと無いのか。伊藤存、37歳(南京トリエンナーレ[2008年]のカタログに寄せた作家のことば) |
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 【空のポートレイト】 伊藤存 2009年 布に刺繍
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