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桐山登士樹が選ぶ 注目デザイン&デザイナー


日本を代表するデザイナーから旬なデザイナーを紹介する「デザイン&デザイナー」。
デザイナーの近況と代表作品を、デザインキュレーター・桐山登士樹がセレクションしてお伝えします。


樹幹通信 ― 2012 May
蓮池槇郎邸のリビングで
蓮池槇郎邸のリビングで

ミラノサローネが無事に終わり安堵している。昨年誕生した「エリータデザインアワード」の初グランプリをCanon NEOREAL WONDERが受賞し、メンバー一同大いに盛り上がったが、今年はミラノ大学のキャンパスで「Photosynthesis - 光合成」を展示コンセプトとしたパナソニックが受賞した。二年連続日本企業が受賞し、サローネに新たな流れを作り出している。

今年のサローネは設営前から雨と寒さの悪天候に見舞われ過酷年であったが、各社の展示から今後のトレンドを予知する上で大変興味深いものであった。詳しくは、分析作業を終えた後JDNで報告したいと考えている。気になった点は次の通りである。

成熟した国際社会は過酷なまでも新たなスキームを求め始めている。価格や質の二極化はますます明確化されてくる。環境をテーマとした製品が顕在化してくる。デザインとデザイナーを話題としてきたサローネ時代は終わる(弱まる)。新たな価値創造をビジネス化するコラボレーション時代(特にファッションブランドの仕掛ける)に突入する。

さらに来年は日本企業がたくさん参加しそうな気配が伺える。この国際舞台は、更なる時代のイメージングを求め始めているだけに斬新なコンセプトが勝負となる。私も気を引き締めて新たなコンセプトメイキングに思考を集中させたい。同時に近隣諸国のアウトバンド、インバンドの動きも見逃せない。

今年も最終日に蓮池槇郎さんからホームパーティにご招待いただいた。NEOREALの企画、制作、運営の緊張感で疲弊していたが、蓮池 さんの時代を捉える眼力が刺激となり新たなエネルギーチャージができた4時間だった。

【お知らせ】 デザイナーの登竜門。第19回富山プロダクトデザインコンペティションの募集を開始しました。 http://compe.japandesign.ne.jp/dw_toyamadesign/2012/

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┃デザイナーと桐山登士樹の推薦文



第156回  12/05/16 UP [NEW]
mute(イトウケンジ、ウミノタカヒロ)  mute (Kenji Ito, Takahiro Umino)
mute(イトウケンジ、ウミノタカヒロ) 今回は久しぶりに若いデザインユニット、muteを取り上げたい。デザインの歴史を振り返ると支持されるデザインには無理がない、佇まいが自然で美しい、そして時代感覚がどことなく注入されている。そんな視点で彼らのデザインを眺めてみると実に清々しい。そしてアクセントとなるカタチや素材や色がハーモニーを聴かせてくれる。歌うようなデザインが新鮮に響く。今後10年ごとにどんな進化を遂げるのか注目したい。あえてアドバイスするならサウンドの聴こえないデザインだけはやらないで欲しい。 (桐山登士樹)


第155回
小野里奈  Rina Ono
小野里奈 2004年のとやまデザイン賞は、小野里奈さんのコートハンガーの「DAVIDSON」が獲得した。当時、東北芸工大の助手だった小野里奈さんは、初々しさの残る爽やかな新米デザイナーだった。しかし、このデザインは単なるコートハンガーでなく、使う人を想像してしまうスペースの中のプロダクトだった。その四年後、今度は錫の特性を巧みに活用した籠のデザインを見せられ驚いた。ここにもカタチではないデザインがあった。想像するに、単にカタチで終わらないデザインを本気で求めている人なんだと思う。デザインは良質でありたい。しかし脇役で良い、そして拘りたい。僕には、そんな小野さんの声が聞こえてくる。生活が楽しく豊かであれば、モノは佇まいで良い。しかし、ちょっとはかまって欲しいデザイン達。素敵だ。 (桐山登士樹)



第154回
山野英之(TAKAIYAMA inc.)  Hideyuki Yamano
山野英之 昨年トラフの鈴野浩一さん、禿真哉さんに「NEOREAL」を依頼した際、多くのプロジェクトでコラボレーションしているグラフィックデザイン事務所、高い山の山野英之さんを紹介された。その後、山野さんとは「NEOREAL WONDER」の会場サイン、「川上元美デザインの軌跡」展の会場サイン等々を依頼し、すっかりフレンドリーな仲となった。山野さんはプロジェクトの文脈を探るのに長けた人だ。そのロジックのなかで何処までが許容される範囲なのか、何がデザインの強さになるのか丁寧に探るスタイルがよい。そして、何より美意識が高いのが嬉しい。層の厚いグラフィックデザイン界のなかで、絶えず新規性を追う姿勢と生み出されるデザインバランスが良質だけに、更に領域を広げて行くだろう。 (桐山登士樹)



第153回
志村信裕  Nobuhiro Shimura
志村信裕 ヴィジュアルコミュニケーションは、これからの産業を担う重要な役割を担っている。この数年、この分野のクリエーターに注目しチェックしてきたが、その中で目に留まったアーティストが志村信裕さんである。昨年の夏、黄金町バザール2011「まちをつくるこえ」に出向き「Iace2011」ほか作品を見せていただいた。この時、日常的に溢れているモノ(大量消費材)に着眼し、新たな映像としての生命を与えている点に興味を持った。例えば、待ち針やゼムクリップ、ボタン、鈴などである。そこで志村さんに、このイメージングの世界を越えた作品を作れないかと話を持ちかけた。それが先ほどキヤノンから発表されたミラノサローネ、NEOREAL IN THE FORESTである。現在、完成度の高い作品制作の真っただ中にいるが、ハイテク技術を生かすには、アーティストの鋭い時代を捉える感性が必要である。そして、それはハイテクのオンパレードよりどこかアナログの味(人間味)がマッチングすると信じている。私たちは日々感覚を信じ、感覚で判断し、生きている。それだけに深層に入り込む作品を強くリクエストしている。 (桐山登士樹)



第152回
角田陽太  Yota Kakuda
角田陽太  2012年初回に紹介するデザイナーは角田陽太さんです。昨年のデザインタイドに、作陶家の五十嵐元次さんとのコラボレーションで出展していた白磁のボタンを見て、近々このコーナーで紹介しようと決めた。これまで手がけたデザインも軽快で上質なセンスが漂っていたが、とかく若い時期は同質化デザインの傾向に陥る。私が求めるのは、若いながらの視野角=クリエイティビティだ。多少荒削りでも可能性を感じるデザイン、デザイナーを欲している。そういう意味では、角田さんはいい感じで肩の力が抜け、自分の進むべき道を見いだし始めたように感じた。確たる輪郭が見えれば、これまでのデザインは更に磨かれ鍛え上げられる。いい時期に差し掛かっているデザイナーだ。 (桐山登士樹)



第151回
高橋理子  Hiroko Takahashi
高橋理子  御徒町のガード下に整備された「2k540 AKI-OKA ARTISAN」に高橋理子さんの拠点、TAKAHASHI HIROKO BASEを訪ねた。「アーティスト高橋理子」=「現代着物のデザイナー」というイメージが色濃い。先入観とは恐ろしいものである。しかし、本人とお会いして、様々な活動をお聞きするとイメージが一新する。何より実に真っすぐものを直視し対応する方だと感じた。そして硬直化している業界へ自身の信念に基づき活動している挑戦者でもある。体を張って、なんて言葉が合致するかわからないが、潔さを感じる。パワフルなクリエーティブワークを通じて、岐路に立つ業界の重き扉を開けてほしい。また、微力ながら支援したいそんな気持ちになった。 (桐山登士樹)



第150回
永山祐子  Yuko Nagayama
永山 祐子  子供の頃、生物に興味を持っていたという永山祐子さん、当時の想いはミクロな世界の遊泳であった。突然進路を変更して対極的なスケールである建築家を志した。改めて、永山建築を見てみると空間に漂う上質な空気感が、人間の身体系にフィットしている。精神的に開放された居心地の良さを感じる。これまでの四角四面の箱ではない、かといって成り立たない空間ではない、ほど好いバランス感覚。建築を人間との対話の対象としてトライアルしているようだ。故にここからいろいろな物語が始まる。経年優化というキーワードが相応しい。人間は生活の中で発見し、思考し、実行して行く。そんな物語の機会を建築という手法で創出している人だと思った。来春には新たな創出があるらしい。 (桐山登士樹)



第149回
田根 剛  Tsuyoshi Tane
田根 剛  海外でデザインを実践していくには、強い意志とスキルとマネージメントとコミュニケーションが必要なことは改めて記するまでもない。
 田根剛さんが今年のミラノサローネで東芝の会場構成を手がけたことで彼の存在を知った。調べると、欧州の各地で修行を積み、2006年にダン・ドレル、リナ・ゴットメと共にパリにDGT(DORELL.GHOTMEH.TANE / ARCHITECTS)を設立し拠点としていることがわかった。突然この三人に幸運が訪れる。エストニア・タルトゥ市に建設されるエストニア国立博物館(2014年完成予定)の国際設計コンペティション最優秀賞を若干26歳にして獲得するという快挙だ。
 改めて作品を眺めてみると、時間軸でデザインが出来る人だと感じた。無理をしない、以前からその場に存在していたかの様な存在感。しかしよく見るとハイセンスで質的重厚感が漂う。新たなものを創るという意気込みより、そこにある必要性を感じさせ、同時に楽しむスケールまでも処理している点が見事だ。三人の独自の文化的な背景やクリエイティビティティがシナジー効果を発している。若くしてチャンスを掴んだユニットだけに、国際的な評価軸で見られ語られる、これからの活動が楽しみだ。 (桐山登士樹)



第148回
田村奈穂  Nao Tamura
田村奈穂  この数年マークしていたデザイナーの一人がニューヨークを拠点に活動している田村奈穂さん。特に2010年ミラノサローネサテリテで最優秀賞を受賞。「Seasons」と名付けられたオーガニックなデザインは、カタチを提案する多くのデザインとは距離を置いた作品で目を引いた。そのサテリテを極めた田村さんが、なんと今年もサテリテにいた。出展作品「Alight」は、自然界に対する田村さんのメッセージが込められたデザインで、制作には自らあたったというから更に驚いた。この人のスケールは自然体であり、日常の喧噪に左右されない図太さと繊細さがある。一点を探る時間の余裕もある。7月に表参道GYREで発表した「SEIKO / NS Concept Watch」の様に、コンセプチュアルでダイナミックなデザインも難なくこなす。新しいタイプのデザイナーを心から歓迎したい。 (桐山登士樹)



第147回
竹口健太郎 山本麻子  株式会社アルファヴィル
竹口健太郎 山本麻子  2008年のことだったと思う。当時、私は京都にある数件の建築物件を手がけていたので、その一つを竹口健太郎さん、山本麻子さんが主宰するアルファヴィルとご一緒したいと思い事務所を訪ねた。アルファヴィルのスタイリッシュでセンスの良い建築が、私の目には光って映っていた。しかし、リーマンショックの影響により、依頼する前にプロジェクトは消えてなくなった。
 そんな動向とは別に、お二人の建築は着実に評価され数々の国内外の賞を受賞している。手がける建築に共通するのは、空間を有機的に繋ぐ解釈が見事だ。プライベート、パブリック、コモンの連続性が空間の豊かさとなり、光の陰影が情緒感を生み出す。新たな空間のあり方を示している。建築自体が大きな転換期に差し掛かっているが、更にスケールの大きなものへとチャンスが訪れそうな予感する。今回紹介する立体的な公園の試案は、都市における新たなコミュニケーションスペースのあり方を示した興味あるプレゼンテーションである。是非、実現してほしい。実現させたい。 (桐山登士樹)



第146回
藤森泰司  Taiji Fujimori
藤森泰司  藤森泰司さんは、今椅子をデザインさせたら一番上手い人だと思っている。6月16、17日、アルフレックスのショールーム(渋谷区広尾)で藤森さんの新作「RINN」「RITA」の発表会が開催された。初めて目にした「RINN」は、とても華麗で美しいデザインであった。数ある世界の名椅子に仲間入りしてもおかしくない。また、座面のファブリックが変えられる様に工夫されて、アルフレックスの名作ソファー「MARENCO」の系譜をゆるやかに継承している点も心憎い。  藤森さんの事務所は不動前駅から徒歩5、6分ほどの住宅地の一角にある。NEOREALの打ち合わせでよく通ったトラフ設計事務所の入っている建物の一階にある。そのドアを先日初めて叩いた。きちんと整理された空間、棚や机の上に数々のミニチュアモデルの椅子が置かれ、世に出たもの、ディテールが途上のものなど、およそ想像した空間だった。藤森さんのデザインは洗練されたフォルムが持ち味。次作も大いに期待したいと同時に領域も拡大して欲しい。 (桐山登士樹)



第145回
谷川じゅんじ  Junji Tanigawa
谷川じゅんじ  表参道のGYREで開催されていた「能作展-NOUSAKU_ism」初日を覗きに行った。訪れたことのある高岡市・能作の工場や倉庫の風景=モノづくりの現場が見違えるほどに整理され、展覧会として一級の質感を放っている。空間構成はJTQの谷川じゅんじ氏である。谷川氏とは、2007年のミラノサローネ時にLEXUSプロジェクトでご一緒したことがある。しかし、今回JTQの仕事を改めて見てみると展覧会や展示会のプロジエクトが多いことに気づいた。1日、長くても一、二ヶ月で消えて行くデザインに対して、客観的に、情熱的に、継続的にプログラムを作れる人だと感心した。そして、谷川氏のデザインの密度(センス)が都市の風景に上手くマッチングしていることを。必要なのは空間と空間を繋ぐ人、そんな人をスペースコンポーザーと呼ぶことも知った。 (桐山登士樹)



第144回
山本達雄  Tatsuo Yamamoto
山本 達雄  ミラノサローネ、サテリテ会場に山本達雄氏はひとりで出展していた。「Resonance」と名付けられた1600本の支柱からなる作品は、人が触れ、物に触れ、ゆらゆらと共鳴する不思議なオブジェ作品であった。二年連続して完成度の高いデザイン「bambi chairs」「Mozzarella chair」を発表してきたスタイルとは、全く違うアプローチに山本氏の思いを探った。すでにキャリアは、サテリテで声の掛かるのを待つような新人ではない。スタハチ時代を通じて、絶えず最先端のデザインに接し、ボリュームのあるデザインも数多く手がけて来た。日常のデザインではなく、自らの想いを被せたデザインが「Resonance」だと見た。思い返せば山本氏の兄貴分のトネリコも、考え抜いた三年間のサテリテ出展であった。事務所設立から五年、新たなフェーズへのステップアップは重なり揺れ不思議な力や空気を醸し出す領域だとすれば、時代の転換期とも重なり、この「共鳴」と名付けられた作品を理解することが出来る。 (桐山登士樹)



第143回
下吹越 武人  Taketo Shimohigoshi
下吹越 武人  建築家、下吹越さんの作品で一番好きな建築は2006年に竣工したキラービルである。事務所に近いので、時たま前を通ることがある。建物は構造とデザインによってモダンな調和を醸し出している。内外の関係をファジーにする事で生まれたインナーバルコニー=コモン空間が価値を高めている。仕事では建築計画のプロジェクトに関わる事も多いが、一番重要なポイントは専有部と共用部を繋ぐ第三の空間=コモンの設定、デザインだと思っている。20年ほど前に建築家で現在芸大教授の北川原温さんの事務所によく出入りしていた頃、当時所員であった下吹越さんとお会いしたそうだ。そんな昔話を爽やかに話してくれる下吹越さんに依頼しかけたプロジェクトがあったが、残念ながらリーマン騒動で頓挫してしまった。次回はプロジェクトを通じて、下吹越氏の実力を知りたいと思っている。 (桐山登士樹)



第142回
ミントデザインズ(勝井北斗、八木奈央)  mintdesigns (Hokuto Katsui, Nao Yagi)
ミントデザインズ(勝井北斗、八木奈央)  ミントデザインズの魅力は、カジュアルウェアを楽しく軽快に、且つハイセンスにまとめる力である。これまでに3回ファッションショーを拝見したが、構成力、演出力、商品力、躍動、臨場感に至るまで、完成された世界観を持つブランドだ。気分を高揚させるファッションは、女子なら一度はトライしたくなるであろう。昨年建築コンペに参加いただき、ご一緒させていただいた。この時、多くの刺激をいただいた。例えば、テキスタイルがファッション以外にもまだまだ可能性のある素材であること、デザインによって様々な表情が作れることなど。八木奈央さん、勝井北斗さんは、魅力の扉を開いてくれる仕事師である。ファッションだけに留まらないミントデザインズは、新たなデザイン旋風を起こしてくれると信じている。昨年受賞された第28回毎日ファッション大賞は、その評価の一つでもある。 (桐山登士樹)



第141回
堀畑裕之+関口真希子  Hiroyuki Horihata + Makiko Sekiguchi
堀畑裕之+関口真希子  1月8日から12日間、青山のスタパイラル・ガーデンで開催されたmatohu「慶長の美」長着展は、日本の文化、歴史継承に視点を定めた素晴らしいプレゼンテーション展示であった。私は二度会場に足を運んだ。matohuを主宰する堀畑裕之さんと関口真希子さんは、慶長年間(1596〜1615)桃山時代後期から江戸時代の初めの20年間の力強い生命力と進取の気風、大胆で楽しいデザイン力にデザイン、アイデアの源泉があるという。「この展覧会の目的は、たんにブランドの紹介ではなくて、最新のファッションやデザインの現場に、いかに日本の固有の文化が刺激をあたえ創作に転換されているかを証言し、来場者にその可能性と未来のあり方を発見していただくことです。」と述べている。
 文化軸の視点からもプラスブランド軸においても、新たな発表の切り口は充分な刺激とポテンシャルを放っていた。そして、何より美しく大胆にして繊細だった。ただ惜しむべき点は、日本の文化行政が今ひとつ世界基準に達していない点である。この様な新しいニューウェーブを受け入れ、長く開催できる世界に恥ずかしくない文化施設が、東京のど真ん中に必要だ。 (桐山登士樹)



第140回
間宮吉彦  Yoshihiko Mamiya
間宮吉彦  数社の大手企業のデザイン教育プログラムを請け負っているが、12月にお越しいただいたのは以前からお会いしたかった間宮吉彦さんである。間宮氏の秘書を以前から良く知っていたので直ぐに調整していただいた。
 ご紹介いただいた作品の中でも最も興味を引いたのは、上海万博日本産業館料亭「紫」である。文中にも記されているが『侘び寂び、儚さ、未完の美学、といった日本文化の精神が表現された「庭」をつくりたい』、『「形のない庭」と「モノ性」という相矛盾する要件を、どう満たすか』など、意識しなくてはならないキーワードが次々と語られる。
 インテリアデザインの魅力は、建築でもなく、プロダクトでもない曖昧な領域をデザインしている点である。常に身を置く空間は身近な日常であり、選択によって非日常に移動する。こうした人間の行動と心理に身近に接するインテリアは実に深い領域である。茶室であろうと大空間であろうと、その密度を掘り下げる間宮氏の意欲的な取り組みと美意識に触れた楽しい機会であった。次はご一緒できるプロジェクトを模索したい。 (桐山登士樹)



第139回
森宮祐次  Yuji Morimiya
森宮祐次  森宮さんに最後に会ったのは、2008年4月のソニーが出展したミラノサローネの会場である。あれから二年半の年月が流れ、森宮さんは昨年ソニーを退社され、なんと「ひとり家電メーカー」の株式会社アカリネを設立した。そして本日、初の新製品となる発表会が表参道ヒルズのGalerie412で12月5日まで開催されている。新商品は、掲載写真に詳しくは記載されているので概要は省略するが、森宮さんが拘った点は「Made in Japan」である。
 大企業のマスプロダクションから離れ、新たなモノづくりへの勇気あるチャレンジに先ずは拍手を贈りたい。64年前数名からスタートしたソニーの創設者、井深大氏がトップに掲げた経営方針は「不当なる儲け主義を廃し、あくまで内容の充実、実質的な活動に重点を置き、いたずらに規模の大を追わず」と記されている。日本人がなくしてはならないモノづくりの基本である。森宮さん頑張れ。 (桐山登士樹)



第138回
原田真宏  Masahiro Harada
harada design engineering  原田真宏さんの建築・デザインには、おおらかな空気が流れている。心から建築が好きで好きで、しかしストイックにならないバランス感覚がすごく良い。
 独立後最初に手がけた「XXXX house」は、カローラ一台分の価格で設計施工。建物と人との距離感を図った意欲作だ。その後の設計する個人邸は、すべて国内外のなんらかの賞を受賞するという快挙を続けている。そして、いよいよ横浜に商業施設「YOTSUBAKO」を設計するチャンスが到来。これまでの個人邸の規模を越えて、どんな原田マジックで構成されるのか竣工が待ち遠しい。何故ならば経験は、既に独立前に実証済みであり力量は申し分ないからだ。
 私が注目している1970年代生まれの建築家の中の一人だ。 (桐山登士樹)



第137回
takram design engineering
takram design engineering  絶え間ない技術革新と絡み合うようにインターラクションの領域が進化している。その一端を担うのが田川欣哉と畑中元秀が主宰するtakramである。
 そして、この新領域にテクノロジーとデザインをブリッジングする為に、しなやかに且つ意欲的に取り組む。この数年間に開発されたシステムとデザインを知るだけで、このユニットの活動から目をはずせない事を知る。高度で難解な領域を紐解く姿は、一つの事に熱中する少年の様で清々しい。ソフトの時代と言われて20年。MPUやOSは、未だ他国の開発したシステムを活用しなくてはならない。しかし、感性領域に踏み込むtakramの研究と活動は、新たな領域にまぶしいばかりの光を与えてくれるかもしれない。テクノロジー&デザインは、間違いなく今後の日本の活動領域を指向している。 (桐山登士樹)



第136回
中村竜治  Ryuji Nakamura
中村竜治  東京国立近代美術館で8月8日まで開催された「建築はどこにあるの?7つのインスタレーション」は、なかなかおもしろい切り口の展覧会だった。
 その中でも、入り口に置かれた中村竜治さんの作品「とうもろこし畑」は、繊細さと大胆さが同居した迫力ある作品だった。後日、美術館のサイトで発想から製作までのメイキングを見ると、高度な作業をアナログ手法で丹念に忍耐強く反復している姿に感服する。
 存在を示す事で都市の象徴性を表す建築の歴史から、現代は存在すら無にする建築が顕在化している。こうした節目を担う一人が中村竜治氏だ。抑圧を促すデザインを美しく、繊細に、時に無機質に表現する才覚に卓越している。今後は1/1の建築作品の中で、全身で空気を体感してみたい。 (桐山登士樹)



第135回
乾久美子建築設計事務所  office of kumiko inui
乾久美子建築設計事務所  最近公開されている建築コンペの中で、乾久美子さんの「浅草文化観光センターコンペティション案」は、実現して欲しかったプランである。国際的な観光地・浅草の持つ土地の力と建物とが、押上に建設中のスカイツリーと共に、新たなダイナミズムを醸し出す可能性を強く感じた。残念だ。これまで乾建築を見てきて、潜在的な上質さ(エレガンス)と割り切り感(シャープネス)のコンビネーションイメージを強く持っている。07年のミラノサローネでは、LEXUS会場のデザイナー候補として推挙し、トルトーナ地区の半野外の会場で手腕を発揮していただいた。現在、9月に香港で開催されるジュエリーフェアの、日本のPRブースのデザインを依頼している。小さなスペースだが、乾さん自らが引かれた図面と模型を見て、関係者のモチベーションが一挙に上がった。外見からは想像のつかない力強さがある。スケールと想像を超えた新たな建築・デザインを今後も期待したい。 (桐山登士樹)



第134回
トラフ建築設計事務所(鈴野浩一、禿真哉)  TORAFU ARCHITECTS Inc. (Koichi Suzuno, Shinya Kamuro)
トラフ建築設計事務所(鈴野浩一、禿真哉)  川崎市民ミュージアムで開催されていた、横山裕一ネオ漫画の全記録「私は時間を描いている」の展示最終日に駆け込んだ。円弧に構成した展示台と人工芝、壁面の極めてシンプルな要素で構成された空間であったが、作家の個性と作品を表すには極めて有効な展示デザインであった。鈴野浩一と禿真哉が主宰するトラフ建築設計事務所は、昨年の「骨展」の会場構成、「三保谷硝子店-101年目の試作展」での「オレチェア」(ハイチェア)のデザイン提供、コンセプチャルで評価を高めた「NIKE 1 LOVE」のインテリアデザイン、そして近作「空気の器」の軽やかで開放的なデザインなどを手がけている。全てに共通する空気感、デザインは時代に心地よい。時代の気分をデザインする建築家である。カタチとカタチ、カタチとヒト、カタチとコトを変幻自在に操るサスティナブルなクリエーターだと言える。60年代NYのポップカルチャー、アートの時代を彷彿させる。飛躍的に活動の範囲を広げていく建築ユニットとして、注目したい。 (桐山登士樹)



第133回
和田 智  Satoshi Wada
和田 智  私は大のクルマ好きだから、毎年デトロイトから始まるモーターショーの情報や出張の折、各社のショールームで実車を確認するのが趣味となっている。そんな世界のカーデザインを牽引している一人が和田智さんだ。和田さんが手がけたAUDI A6がアウディのブランドエクイティを著しく向上させた事は良く知られている。A6のデザインが人気を呼び、その後の手がけたQ7、A5でアウディはデザイン&クオリティナンバーワンの会社となった。アウディはミラノの街によく似合うクルマで、存在感を発揮している。それだけ好調にビジネスが展開できている証でもある。和田氏本人は穏やかで真摯に対応する姿勢が気持ちよい。また、グローバル&ローカルの二軸を理解している人だ。ダイナミックとデリケートといった対極の概念をものの見事にデザインする。昨年7月に日本に戻ってきたが、今後はカーデザインのみではなく日本のデザインを高める為にも様々な企業や地方と戦略的にビジネス展開して欲しい。 (桐山登士樹)



第132回
中山英之  Hideyuki Nakayama
中山英之  中山英之さんの作る建築は、お施主さんだけが手にする事のできる宝箱のような自由が広がる解放区だ。建築の壁を越えて、内外、内内に日々発見があり、空間に優しい空気と時間が提供される。今回紹介する作品に添えられた絵の様に、じゅわーと平和な気分に誘ってくれる。ファッションセンスは建築界の中でも一二を競うシャレもので、その存在は次代を担うリーダーに相応しい。ただ30代の建築家は有能な人材が多いだけにアントンとはしていられない。しかし焦りは禁物。誰にも負けない概念を超えた発想力とキャラクターがある。たぶん一作一作毎にその完成度は増し、独自の世界観を作り上げていく建築家だと信じている。今は建築に夢中だが家具やプロダクツも見てみたい、そんな建築家だ。 (桐山登士樹)



第131回
高橋匡太  Takahashi Kyota
高橋匡太  アーティスト、高橋匡太という男に興味を持った。昨年の8月下旬に電話を入れ、9月初め京都の長屋を訪ねた。近くの駅まで迎えに出てくれた匡太氏は、少年の様な清清しさをもったアーティストだった。
 人の話をよく聞き、親切で、ビールと煙草を愛飲・愛煙する自由人だ。しかし、作品に打ち込む姿勢は並大抵ではない。彼の一挙一動により作品に生命力が備わる。キヤノンのプロジェクトでは延べ六カ月ご一緒したが、作品が進化する毎に凄みが増してくる。
 現在、ミラノトリエンナーレ美術館では、現在ロイ・リキテンシュタインの展覧会が行われている。私は20世紀のリキテンシュタイン、21世紀の高橋匡太と、とある会で明言した。それだけ才覚をもったアーティストである。共働するスタッフやサポートメンバーにも恵まれている。国際的に更に飛躍することを保証する。 (桐山登士樹)



第130回
韓 亜由美  Han Ayumi
韓 亜由美 友人の菰田和世さん、伊東史子さんらの口からよく出る名前がハンさんだ。頼れて素敵でエレガントな女性の代表格のようである。そのハンさんが日々相手にしているのは、主に道路である。交通工学、生態心理学、視覚情報学の三軸から機能と付加価値をデザインで捉え直す=規定の概念を再構築する知的でダイナミックな仕事をされている。高速道路をドライブするのが趣味なので、気の向くまま流す先々にハンさんのデザインが出現する。交通システムと一体となったハードウェアに付加された時間のデザイン。人間の身体に適度なリズム(認識)を与えてくれる見事な領域の深化である。そして、複合と連結により増幅する都市インフラでもっとも必要な領域である。 (桐山登士樹)



第129回
Chihiro Tanaka
Chihiro Tanaka ちょうど一年前、田中さんから表参道のギャラリーで開催される展覧会の案内をいただいた。丁重なお誘いだったのだが、その時は海外出張で伺うことは出来なかった。帰国後連絡すると作品を一式持って現れた。梱包から取り出された作品の美しさもさることながらデザインに対して、デザインビジネスに対して、実に客観的な思考と戦略をお持ちなのにはビックリした。まだ三十前である。ついつい昔の自分を思い返してしまった。このページに掲載されたどの照明も陰影が美しい。光の特性を優しく捉えたデザインは素敵だ。さらにこれまでの多くの名作に負けていない独創性に可能性を感じる。生産に関しても独自のインフラを整備している。流通に関してもさまざまなルート、ネットワークも開拓している。海外にどう進出するかが、次の課題だ。本人の夢は大きく、若きし頃読んだ五木寛之氏の小説「青年は荒野をめざす」の主人公の様に果てない旅は続く。 (桐山登士樹)


第128回
石黒 猛  Ishiguro Takeshi
石黒 猛 今年のトップバッターは、石黒猛さんです。石黒さんは、内田洋行の武幸太郎さんからご紹介いただきました。その後、私の事務所に遊びに来られ、私も神楽坂のスタジオに伺わせていただきました。この神楽坂のスタジオが実に楽しい実験場。機械いじりが大好きな私、こういう実験中のモノを見るのも、触るのも、話しをするのも大好き。元東大総長だった吉川弘之氏は、かって「アブダクション」について論じられたことがありました。まさに石黒氏のスタジオは、仮説を裏付ける実験場です。故にその仮説は、解けない方程式の如く、様々な試行錯誤を強いてきます。しかし、こうした苦闘を経てきたものだけに完成されたデザインには、物語があります。石黒氏の様なタイプがもっと現れれば、デザインはデザイン科学の時代に突入するのだが・・・。デザイン界にも新しい環境が必要な事を実感しました。また、本人の取り組む姿勢を見ると、何かしなければいけないような気にさせる。説明していただいた目から鱗の様なアイデアを是非、根気強く具現化して欲しいと思います。 (桐山登士樹)


第127回
エマニュエル・ムホー  Emmanuelle Moureaux
エマニュエル・ムホー 半年くらい前から「エマ通信」と題したエマニュエル・ムホーさんの最新プロジェクトのメール通信がメルアドに送られてくるようになった。改めて、じっくり見るとカラーが心地よい刺激と空間に生命力を与えている。色使いは、繊細にして大胆、青森のねぶたの様なダイナミズムを感じるものまである。今回紹介するプロジェクトも銀行やショールーム、クッキングスクール等々、これまでの機能本位で無機質な空間概念を見事にぶち破り、魅力的なデザインを提供している。日本に住み着いた多くの海外クリエーターが我々以上に日本の文化を研究し理解し、デザイン、建築に投影している。こうしたデリケートな仕事ぶりに感服してしまう。先月初旬、ミッドタウンのデザインタイドの会場で、商品を説明しているムホーさんの姿を見かけ、その姿が実に楽しそうだったのが印象的だった。建築・デザイン界に貴重な人だ。 (桐山登士樹)


第126回
根津幸子  Nezu Yukiko
根津幸子 根津さんは、当時伊東豊雄さんの事務所に所属していた式地香織さんから紹介された。それが縁で07年のメゾン・エ・オブジェのジェトロブース「Japan style」の会場構成をお二人にお願いした。パリでの施工は、夜中の作業となり凄く寒く辛い思いをさせてしまった。先日も一時帰国されており、その時にパートナーと共同でアムステルダムに建築建築事務所を開設したことを知った。根津さんの良い点は、空間全体が適度な緊張感を持ちつつも大陸的な広がりを感じさせる点である。また自身が明るい性格で人をリラックスさせる。世界的な大不況はオランダでも同様の様で「こんな時だからこそ、これまで会えなかった人が時間を取ってくれる」とポジティブに話す姿が印象的。いずれにしてもバイタリティ溢れる行動派だけに国境を越えて、新しい建築とデザインスタイルを見せてくれると信じている。今回紹介する作品は、なかなかの力作ばかりで国際的に飛躍して欲しい。 (桐山登士樹)



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