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 ウェブスカイドア 現代篇
 


川井由夏
kawai yuka


[ 略歴 ]
1963
  東京都生まれ
1986
  多摩美術大学デザイン科染織デザイン専攻卒業
1988
  多摩美術大学大学院美術研究科修士課程修了
1991
  M.F.A. University of Washington, Seattle, U.S.A.
1998
  文化庁派遣芸術家在外研修員として渡英
1999
  ポーラ美術振興財団助成在外研修で渡英
2000
  Postgraduate Programme, Goldsmith College, London, UK

  現在、東京都在住

[ 主な展覧会 ]
1992
  個展 (コバヤシ画廊、東京)
1993
  個展 (コバヤシ画廊、東京)
個展 (千疋屋ギャラリー、東京)
「サントリー美術館大賞展」 (サントリー美術館、東京)
1994
  個展 (コバヤシ画廊、東京)
1995
  「8th International Triennale of Tapestry」
 (The Central Museum of Textile, Poland)
「現代ファイバーアートの諸相」
 (京都市四条ギャラリー、京都)
1996
  個展 (コバヤシ画廊、東京)
1997
  「美の予感」 (高島屋美術画廊、東京、大阪、京都、横浜)
1998
  個展 (コバヤシ画廊、東京)
1999
  「Invisible Exhibition」 現地滞在制作・展示
 (Pezinok Central Park, Slovak Republic)
2001
  「現代の布 ― 染と織の造形思考」
 (東京国立近代美術館工芸館、東京)
2003
  「いととぬの」 (群馬近代美術館、高崎)
2004
  個展 (巷房、Space Kobo&Tomo、東京)

すべての作品撮影:末正真礼生


「Soothing Breath」
1996年

「Encounter Yourself」
1998年

「Day to day」
2004年

「Day to day」
2004年

「Sign」
2004年

「Seeking」
2004年

「Seeking」
2004年

「Seeking」
2004年
織ることの佇(たたず)まい

川井由夏の作品は、「織る」ことへの独自の思考とスタンスとを持っている。手作業へのこだわりはあっても伝統工芸の部類に入るものではなく、また用途を持たない純粋な作品が目指されているからといって、理念や視覚の偏重である(いわゆる)「現代美術」の範疇に属するものともいえない。彼女の仕事は、糸を織り込んでゆくなかに、記憶、経験、知識、あるいは日々の生活からの感覚的・感性的な刺激といったものが作品に込められていく、という種類のものである。作品とは、観る者に観念的な理念やメッセージを伝えるだけではない。作品がつくられるあいだ作者が過ごした時間の堆積が、その作品に(まさに触覚的に)触れ、対峙する者の内部に浸透し、わたしたちが過ごしている時間や経験のかけがえのなさが看取されるようになる、ということもあるのではないだろうか。
もうひとつ、川井の作品が示しているのは、織る、ということそのものが、平面的な作業から立体的・空間的なそれへの展開を内包している、ということだ。糸が交差するということ自体が、まず立体/空間への傾きを示唆する。「布」の平面性から出発した彼女はやがて、布がたちあがり、ないしは部屋を囲むことによって、空間的な広がりを作品に持たせるようになった。この「空間」はしかし、西洋的な、幾何学的に計測できるような合理的空間ではないだろう。川井の作品に、たとえば「Far Voice」とか、「Soothing Breath」と題されたものがある――「遠い声」とか「息を整える」とでも訳すべきだろうか――。それらは、どこか彼方からの呼び声が精神に反響すること、あるいは息(気=心)を整えることによって周囲の「気」を落ち着ける、という、いわば身体と精神が結びついた、ものと心が響きあう有機的な「間(ま)」を示唆しているのである。彼女の作品の前に立つと、「たたずまい」という言葉を思い出す。その空間にたちどまり(=「たたずみ」)、ものや空間に対して、気持ちとからだを推し量り、ひいては、身住まいをただし、気を落ち着ける(そういえば、彼女の作品のタイトルには「Encounter Yourself」というのもある)。そうしてこれらはすべて、「織る」という行為の連続から紡ぎ出されてくるのである。
〜 倉林 靖/美術評論家


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